歯を白くしたい、歯のホワイトニングをしようとお考えの方が近年増加傾向にあります。歯医者さんへ行く前に、歯の美白(方法)に関していろいろ知りたいという方も多いのではないでしょうか。
歯のホワイトニングは保険適用外の自由診療になりますので、中には思いのほか高額なイメージをお持ちの方もおられるかと思います。歯医者さんに行く前の基礎知識として、以下、歯のホワイトニング(その他歯の美白法)に関して解説しております。
1. 歯のホワイトニングとは
歯のホワイトニングとは、主にブリーチング(漂白)のことを指します。天然歯のみが対象となります。差し歯や詰め物の色などは漂白されません。
歯のクリーニング(PMTC:Professional Mechanical Tooth Cleaning)とホワイトニングの違いですが、歯に付いた汚れを落とすのがクリーニング(PMTC)で、自分の歯の元々の色よりさらに白くするのがホワイトニングです。ホワイトニングは歯の内面を白くする方法で、歯の表面に付いた汚れ(茶渋やたばこのヤニ等)を落とすクレンザー的な効果を果たすものではありません。
歯のホワイトニング法は大きく2つに分けられます。「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」です。
「どちらがいいのか?」というと、それぞれ一長一短があるのですが、個々の希望(治療に対する期待・要求度)や希望者がホワイトニングに費やせる時間的な制約等により、どちらを選択されるかになると思います。
2. オフィスホワイトニングとは
「オフィスホワイトニング」はクリニックで施術されます。何回かに渡りクリニックでブリーチ処置を施し、段階的に歯を白くしていくという流れです。
その都度変化が認められるため、早く歯を白くしたいという即効性を求める方には向いていると言えるでしょう。回数通院する必要がありますが、クリニックで処置を施していく毎に、段階的に歯が白くなっていくのが自身でも確認できます。
反面、急速に歯を白く漂白させる訳ですから、その分、その都度歯に負担がかかる度合いはホームホワイトニングに比べると大きいと言えます。急速に白くした分、後戻りもホームホワイトニングに比べると早いという傾向があります。また歯の表層面が白濁したような、やや不自然に見える仕上がりとなるケースも多々認められます。
ですので、オフィスホワイトニングは単純に歯が(施術前より)白くなればいいという方や、例えば数日後に結婚披露宴を控えているので、それまでに歯を白くしたいなどという方や、数日中に人前でスピーチしたり演じたり・撮影等のイベントを控えているので、それに間に合うよう歯を白くしたいという方など、時間的な制約(期限)がある方にはお勧めでしょう。
オフィスホワイトニングでクリニックに通う頻度・費用について
オフィスホワイトニングの場合、通院頻度はそのクリニックで採用しているシステムによって異なります。回数にして概ね5~6回、1回の処置に60~90分くらいというパターンが多いと思います。ホワイトニングに対するその人それぞれの期待・要求度、目指すゴール(=白さ)、あるいは個人の事情(いついつまでに仕上げたい等の事情)によって異なるのですが、それら状況に応じて、それ相応の数回の通院が必要となります。
また施術前の歯の白さは人によって、もともと黄ばんでいる傾向の強い人もいれば、比較的白い歯の人の場合など個人差がありますから、スタート時点のその人の歯の色具合によっても、施術回数および使用薬剤量、費用も変動する場合があります。歯の色がもともと黄ばんでいる傾向の強い人の場合には、その分、ホワイトニングに要する時間・回数がかかります。
オフィスホワイトニングの費用は、1本いくらというパターンや、何本かまとめて回数で1回いくら、あるいは何回かを1クールとしてセット料金でいくらなどとされている場合がありますが、料金体系は医院によって実に様々で、やや分かりづらく、結果、ホームホワイトニングより割高になることも多いようです。
3.ホームホワイトニングとは
「ホームホワイトニング」はその名のとおり、ご自宅でご自身の手によってホワイトニングを行います。マウスピース(マウストレー)内面にホワイトニングジェルを盛って、歯列に装着するという方法で、1日数時間、2~3週間程度の期間をかけて実施します。低濃度のジェルを使用し、じっくり時間(日数)をかけて着実に仕上げていきます。
じっくりと徐々に仕上げていくため、オフィスホワイトニングに比べると、その都度歯にかかる負担も緩徐であり、効果はオフィスホワイトニングより長期安定維持できます(後戻りしにくいということ)。また透明感のある自然な白さに仕上がり、白くキレイに漂白出来る範囲(限界点)はオフィスホワイトニングよりも上回ります。
ホームホワイトニングでクリニックに通う頻度・費用について
ホームホワイトニングの料金はおおむね、1クールのセット料金(マウストレー・ジェル数本込みで何週間か体験使用できる内容)になっている所が多く、ゴール(使い切りの量)が最初から決められていますから、分かり易い料金設定とも言えます。セット内容や取り扱っているホワイトニングジェルの種類(銘柄等)はクリニックによって異なります。
ホームホワイトニングの場合、通院回数は最少で2回となります。通院と言っても、そもそもホームホワイトニングは自宅で実施していただくものですので、何か治療的なことをするわけではなく、1回目にホワイトニングに必要なマウストレー(マウスピース)製作のための歯型採りをし、2回目にマウストレーおよびキットをお渡しして、やり方の説明・デモ・歯のクリーニング等を行い、後はご自宅で、、、という流れとなります。
4.ホワイトニングのメリット・デメリット
クリニックにおけるホワイトニングの「メリット」に関しては言うまでもないでしょう。「デメリット」は?と言えば、オフィス・ホーム双方に共通して、まずは通院の必要があるということ。費用に関しては自由診療(保険適用外)となりますから、ご存知のとおり、最終的に数千円では済みません。
オフィスホワイトニングは、ホームホワイトニングよりも倍以上の通院回数がかかり、即効性はあるのですが、そのぶん歯にかかる負担も大きく、また後戻りも早いという傾向があります。毎回の処置においては、お口の周りに装着される器具による不快感が伴います。
ホームホワイトニングの場合、ホワイトニングジェルを塗布したマウストレーを装着した状態で一定時間置き、それを数週間に渡って実施していただく必要があるため、その手間暇がかかるので、それが煩わしいという方や、そもそもお口の中にマウスピース状の物を入れっぱなしにしていると気持ち悪くなるという人には向きません。
ホームホワイトニングに使用するマウストレーはかなり薄くなっており、厚みは0.5mm前後ですので、例えばスポーツ選手の使用するマウスピースをイメージするのとは全く異なります。ご参考までに、今まで当医院でホームホワイトニングの対応させていただいた方々の中で、マウストレーの装着感が嫌で途中で中断された方は過去1人もおりません。
ホワイトニングを始めることによって起こりうる不快症状として、一番多いのは知覚過敏様症状の発現です。簡単に言うと「歯がしみる」という感覚です。これに関してはホワイトニングを実施した多くの方が経験する症状になります。程度は個人差がありますが、多くは一過性の症状ですのであまり心配は要りません。ホワイトニングをやめると治ります。
ホワイトニングに使用するジェル等の薬剤は歯に害があるものではありませんが、それでも多少の刺激性はありますから、けっこう歯がしみたりということがあります。これはオフィス、ホーム問わず共通です。
クリニックではホワイトニングに伴う知覚過敏に対しての対処法も、その症状によって適切指導あるいは適宜対処法も用意されていますので安心です。またホワイトニング終了後にその効果を長期維持する方法など、クリニックではホワイトニングに関しての豊富なノウハウを持っていると言っていいでしょう。この点はクリニックでをホワイトニングを実施する強み(メリット)と言えます。
歯になるべく過度な負担を掛けることなく、低濃度のジェルを使用してじっくりと確実に仕上げ、その効果を長期安定維持させたいということであれば、ホームホワイトニングを第一選択でお勧めします。
5.歯の色が戻るまでの時間
ホワイトニングの効果はどのくらい持続するのか?いわゆる「後戻り」に関してですが、、、
歯というものはそもそも日常の食生活において日々酷使される環境に置かれています。食べ物を噛み砕いたり切り裂いたり、熱いもの・冷たいもの、酸性のもの・アルカリ性のもの、日々これだけの環境にさらされれば、それに伴う負担も大きく、飲食物や嗜好品の影響による着色(外因性の着色)も已むを得ません。また、人間の歯は年月と共に経年変化で色調が濃くなるという自然現象が加わります。緩やかに進行する歯の内部の生理的変化です。
これらの事象も踏まえて、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングでは、施術後にどんな変化(後戻り)が認められるのかということですが、、、
オフィスホワイトニングは短期間で歯を白く出来るのですが、急速に歯を白くできる反面、後戻りしやすく(元の状態に戻りやすく)、やはり「即席ホワイトニング」的であるということは否めません。オフィスホワイトニングでは施術後ごく数か月で効果が薄らいできた(後戻りした)という事を確認した例も少なくありません。
これに対してホームホワイトニングは?というと、年単位で放置していても、その効果は長く持続します。ある文献によると、2年経過した場合、20%程度の後戻りが認めらるという検証例がありましたが、言い方を変えれば、2年経ってもほぼいい状態が維持できていると言えます。
当医院で実施した例を挙げれば、4~5年放っておいても、それ相応の多少の経年変化(若干の後戻り)は当然認められるものの、ホワイトニングをしていない人より全然白い状態でそこそこ保たれているというのが実感です。少なくとも2~3年程度は大丈夫と言えるでしょう。
ホワイトニング実施(終了)直後の状態で、長期継続して白くキレイな歯を維持したいという方におかれましては、当医院では目安として2~3年後に1度チェックさせていただき、リタッチアップ(再度ホワイトニング)がをした方が良いかアドバイスさせていただきますが、例えばそのくらいの期間でリタッチアップをというパターンになる方は数としては少なく、ほとんどの方は白くキレイな状態で維持されています。
またオフィスホワイトニングとホームホワイトニング双方を併用するプランを提供しているクリニックもよくあるようですが、オフィスとホームを併用すると、その段階段階でどちらの効果が優位に働いているのか見極めづらくなるという難点があります。また歯にかかる負担や、その分費用がかかってしまうことを考えても、私個人の見解としては、ダブルで実施する必要性があるのかは甚だ疑問です。
ホームホワイトニングは自宅で数週間に渡りじっくり時間をかけて実施する方法ですので、ホワイトニングに費やす時間(期間)はオフィスホワイトニングよりはかかるものの、その分の価値(費用対効果)は十分にあると思います。
ある程度ホワイトニングに費やす時間があって、どのみち同じような費用をかけるならば、迷うことなくホームホワイトニングをおすすめします。
6.セラミッククラウンやラミネートベニアの方がいい場合、ホワイトニングの方がいい場合
【ホワイトニングでは解決できないケース】
●重度の変色歯。日本人で時折見受けられるのが、テトラサイクリン系抗生物質の影響による変色歯です。歯の色が明らかに全体的に暗く(灰色がかっている感じ)、1本の歯を見た時に木の年輪のように横線状に層に分かれているような見え方で、前歯数本が連続した横じま模様状になっている状態などが典型的な例です。胎児期に母親が該当薬剤を服用した場合や小児期に本人が服用した場合に起こります。
このようなケースではホワイトニングでの歯の色の改善は困難です。このような変色歯の方で、歯の色が悪いことに関して以前からかなりコンプレックスをお持ちで、なんとか白い歯を手に入れたいという場合には、セラミッククラウンやラミネートベニアによる治療をお勧めします。
※一口に変色歯と言ってももちろん程度にもよりますので、変色歯でお悩みの方におかれましては、1度クリニックへ出向き、歯科医師と相談されてみることをお勧めします。
●明らかに黒ずんで見える歯
グレーっぽい色の歯の人なども含まれます。これらの重度の変色歯の場合には、残念ながら、ホワイトニングでは全く太刀打ち出来ません。仮に根気よく続けたとしても、改善効果が認められないことがほとんどです。セラミッククラウンやラミネートベニアによる治療をお勧めします。
●歯の摩耗の程度が強い人。特に歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある人は、歯の摩耗が進んでいる傾向があり、エナメル質が薄くなっているため、ホワイトニングの薬剤が敏感に反応して(具体的にに言うと、極度にしみる、あるいは痛みを感じるレベルに至る等)ホワイトニングを中断せざるを得ない状況になってしまうことがあります。
●虫歯のある人。この場合も虫歯をそのままにしてホワイトニングを実施すると、虫歯の部分にホワイトニングの薬剤が敏感に反応して、強い痛みが出る場合があります。歯科医の診断のもと、適宜、虫歯の治療を済ませてからホワイトニングということになります。ホワイトニング前提の虫歯治療は、虫歯の程度や治療部位によってやり方もいろいろありますので、歯科医とご相談を。
●知覚過敏がある人。ふだんから冷たい刺激でどこということなく歯がしみる感覚があるという人や、歯磨きで歯を擦った時にチリッと敏感に反応する歯がある人。ふだんの歯磨きで力を入れてゴシゴシ磨く人に多いのですが、歯の根っこの部分が掘れた状態になっている人(楔状欠損)、歯根が露出している傾向がある人。これらに該当する人も、こういった問題を解決してからということになります。
●神経を取った歯。神経を取ったまま(クラウンなどかぶせ物をしていない)状態で変色している場合というのがよくあるパターンなのですが、変色していない場合でも、そのまま通常のホワイトニングを実施すると、神経を取っている歯だけ色が合わなくなるという現象が起こります。神経のある歯と無い歯ではホワイトニングの効果(仕上がり・薬剤の効き)が全く異なるからです。
神経を取った歯をホワイトニングする特殊な方法もありますが、なかなか白くはなりません。神経を取った歯に関しては、いずれ最終的にはセラミッククラウンによる治療を選択される方が賢明かと思います。神経を取っている歯は歯が脆くなっていますので、クラウンにすると、その脆くなっている歯を補強できるというメリットがあり、歯の色も断然キレイにすることができます。
●極端な要望。極端な要望というのは例えば、陶器やタイルのような白さにしてほしいという要望などです。ホワイトニングで出来ること、出来ないこと(限界)もある訳です。ご希望の歯の白さに変えたい場合には、セラミッククラウンやラミネートベニアによる治療を選択されることをお勧めします。
ホワイトニングで完璧に白さの加減をコントロールすることは出来ません。先にも述べましたが、ホワイトニング前(施術前)の歯の色は人それぞれ、もともと黄ばんでいる傾向の強い人、もともと白い人などなど、その人それぞれでホワイトニング後の仕上がり具合(白さ)および限界点も異なります。ホワイトニングは白さを予測できないこと、白さにも限界があること、歯の白さが気に入らない場合に修正は出来ないことが欠点です。
【ホワイトニング単独では解決できないケース】
●前歯に既に虫歯治療の跡(レジン充填等)が多く認められる人。前歯部(主に右の犬歯から左の犬歯にかけての計6本)にレジン充填(一般的に前歯の虫歯治療に用いられる白い詰め物)が点在して多く見られ、レジンの変色等でまだらで継ぎはぎのような状態になっている場合、さらにそれが複数本に及んでいたり、1本の歯に対して詰めている範囲(面積)が比較的大きい場合。治療跡の程度にもよりますが、ホワイトニングでレジンの色は白くすること出来ませんので、ホワイトニング後の再レジン充填や、状況によってはセラミッククラウンによる治療を検討された方がいいケースとなります。
●前歯部(主に右の犬歯から左の犬歯にかけての計6本)のうち1本だけ(あるいは数本)セラミッククラウン等の差し歯だったりする場合も、当然、ホワイトニングでは差し歯の色は白くできませんので、ホワイトニング後に差し歯の部位の再治療が必要な形となります。これとは逆に、差し歯の色に合わせてホワイトニングというパターンは、現実的に難しいことが多いです。差し歯もやり替えてホワイトニングもしたいという場合は、先にホワイトニングをしてから、その色に合わせて差し歯を作り替えるという順序が妥当です。
【ホワイトニング、クリーニング、セラミッククラウン・ラミネートべニアそれぞれの違い】
歯科において、歯を白くするということでイメージされる用語の中には「ホワイトニング」をはじめ「セラミッククラウン」「ラミネートベニア」「クリーニング(PMTC)」など、皆さんの中にはこれらの区別がハッキリしないという方も、もしかしておられるのではないでしょうか?
「ホワイトニング」は、歯(天然歯)そのものを漂白し、歯を白くする方法です。前歯に差し歯があったり、レジン充填(虫歯治療の詰め物)がある場合、その部分は漂白されません。自身の歯をいわば主原材料として施す処置となりますから、白さのレベルとしては自然な感じでかつとてもキレイな清潔感のある白さに仕上がります。
「セラミッククラウン」はかぶせ物になりますから、歯を削って白いクラウン(人工物)をかぶせることにより歯を白くする方法になります。よく「芸能人のように歯を白くしたい」という方がおられますが、テレビおよび各種メディアで見かけた憧れのまぶしいほどの白い歯の持ち主は、ホワイトニングではなく、こちら(セラミック法)を施して白いのだという比率がおそらく高いものと思われます。ホワイトニングは歯を削ったりする必要はありませんが、こちらは本格的な治療になります。
「ラミネートべニヤ」というのは、歯の表面を1層削ってから、その上にちょうどネイルのようにセラミック製のシェルを張り付けるという方法です。セラミッククラウン同様「歯を削る」という行為が伴い、本格的な治療になります。※歯を全く削らないでこれらの方法は不可能です。
セラミッククラウン、ラミネートベニヤの通院回数(期間)も通常の歯の治療に通う程度は必要になります。これらの費用に関しましては自由診療(保険適用外)となり、医院によって料金設定は様々ですが、1本10万円前後~の費用はかかると思います。詳しくは各医院の料金表等を参照されてください。
「クリーニング」は、歯の表面の汚れ(歯垢・歯石・着色)を取り、表面を滑沢化させ歯垢などの外来の付着物が付きにくくし、口腔内の適正な衛生環境を保つというものです。専用のブラシやラバーカップなどを使用し、歯の表面に付着した汚れをを取るというイメージです。歯そのものを漂白(内面に浸透させて漂白)するホワイトニングとは全く別物です。クリーニングではその人それぞれの本来の歯の白さのレベルには戻りますが、クリーニングをすれば歯がより(本来の自分の歯の色よりもさらに)パリッと白くなるというものではありません。
分かりやすくイメージ出来るもので例えて言うと、ホワイトニングは車の塗装コーティング(専門店のプロの職人が高級車を対象に手掛ける本格的な方のです)。これに対して歯のクリーニング(PMTC)はセルフ洗車した後、市販のワックスを手掛けした感じとでも言いましょうか、もともとのその車本来の色艶に回復させることは出来ますが、これのみでは、塗装の色自体が変わる訳ではありません。野外駐車で風雨にさらされてしまうとその効果も長続きしません。
一方、専門の職人が手掛ける高級車用の本格的なグラスーコートは、最初に塗装面のごく表面をあえて一層研磨し、塗装皮膜の表面にグラスコート加工を施す訳ですから、その車本来の標準塗装色よりもさらに深みのある色に変わります。その効果も長期間維持でき、以後、ちょっとした汚れは水洗い洗車のみの簡単なケアで済むようになります。
今回ついでに「歯のマニキュア」と「ダイレクトボンディング」というものについても紹介したいと思います。これも、ネットでいろいろと歯の美白に関して調べている方は聞いたことがあると思います。歯のマニキュアなどは試してみたという人もいそうな気がします。
「歯のマニキュア」はクリニックで提供されているものよりも、ネット通販品等市販のものの方が普及しているかも知れません。逆に、クリニックで提供されている率がかなり少ないことから言えば、効果はそれなりの評価のものでしかないと言えるでしょう。気軽に試せて剥がすのも簡単なのですが、その仕上がり具合はと言うと、およそ自然でキレイな歯の白さとは程遠く、あくまで一時しのぎ的なものと捉えてください。ホワイトニングやセラミッククラウン・ラミネートべニアとは全く比較の対象にすらなりません。
「ダイレクトボンディング」とは合成樹脂(プラスチック)で歯面を薄くコーティングする方法です。歯の形態修正にも用いられます。ダイレクトボンディングはマニキュアとは異なり、クリニックでのみ提供されている処置で、通常の治療になります。
ダイレクトボンディングは、上塗り(ベタ塗り)的なマニキュアと比べると、ある程度の耐久性はあるのですが、合成樹脂という材質の特性上、治療直後はわりとキレイに見えても、変色し易いため、変色改善のため結局、同じ歯に対して同じような治療を何度もやり直すことになりかねません。変色をカバーする目的でダイレクトボンディング法でコーティングする場合、材質的に透明感の無い不自然な白さになってしまうことも多いので、あまりお勧めしません。
7.ホワイトニングジェル、マウスピース等、ネット通販での購入とクリニックで購入する場合・違い
ネット通販でも様々なホワイトニング関連商品が販売されており、金額も数千円からのセットなど、魅力的なものがズラリと並んで出てきます。ホワイトニング製品はもともと米国からの輸入品が主になっています。現在ネット通販等で販売されている物もほとんどがそうです。
参考までに「歯磨き剤(ペースト)」でホワイトニング効果を謳った物は、汚れを取る事は出来ますが、残念ながら、ホワイトニング効果はありません。またネット通販品のホワイトニング薬剤には、使用後にトラブルが生じる可能性もありますから注意が必要です。クリニックで提供する薬剤は市販の物とは違います。
歯科医の指導のもとに実施するホームホワイトニングと、何の制約も受けずに(クリニックへ出向く必要もなく)気軽に購入し実施できるネット通販品使用でのホームホワイトニング、金額的にはネット通販品の方が全然安上がりにいきそうだ、となれば、おそらく多くの皆さんはネット通販品の方に魅力を感じることでしょう。
今や何か買い物する際には、それら商品の最安値などを調べて、同じものを購入するなら出来るだけ安い所からと発想されるのが人情ですが、ネット通販がこれだけ普及した現在であっても、クリニックでのホワイトニングがしっかり成り立っているのはそれ相応の理由があります。
ネット通販品を使用してのホームホワイトニングと、歯科医の指導のもとに実施するそれとでは、仕上がりの効果(満足感)には雲泥の差が出るであろうと言っても決して過言ではないでしょう。
日本人は欧米人に比べ歯のサイズも小さく、エナメル質の厚みが薄いという傾向があります。欧米人の歯は日本人の歯より、少々の刺激に対する抵抗性がある(タフである)と言えます。ようは日本人より頑強な歯の欧米人をもともと対象に販売されているネット通販品を安易に使用してしまうと、日本人には合わなかったり、強烈に歯がしみるあるいは痛みを感じるレベルに至ってしまうという危険性が大いにあります。当然、ホワイトニングを中断しなければなくなるのはもちろん、場合によっては神経を取らなければなくなったりと大きなダメージを受けたという例も報告されています。
こういった事例を踏まえると、日本人に合った実績のある適正なホワイトニング剤を選択する必要があります。ですので、何の不安もなく安心してホワイトニングをスタートし、安全かつ確実に早く効果的に歯を白くし、その効果を長持ちさせたいとお考えならば、やはりクリニックで適切な指導のもとに実施されるのが賢明と言えるでしょう。
また最近では「セルフホワイトニング」という名称で、エステや美容院で歯のホワイトニングも展開されているようです。位置付けとしては、クリニックで行うホワイトニングとネット通販品を使用してのホワイトニング、そのすき間にうまく入り込んでいる第三の選択肢となるでしょうか。
1回あたりの料金も安く設定されているようで、システムとしては店舗スタッフの指導の下、自分でホワイトニング剤を歯に塗布し、さらにその上からホワイトニング効果促進のための光を当てるなどの施術を行うという流れのようです。歯科医院に行くのよりも緊張感が少ないのは歯医者が苦手な人にはメリットになるでしょう。1回当たりの料金は安いようですが、その内容や効果、セルフでのやり方に伴う安全性を考えるとむしろ高くついてしまったり、やはり事故の可能性も否めません。
ホワイトニング実施に伴う事故の危険性を考察する際に忘れてはならないポイントが、やはりクリニックの存在です。クリニックで歯科医が医療行為として行うホワイトニングは安心できる治療です。
何と言っても歯の専門家は歯科医であり、当然、ホワイトニングに関しても、またその人それぞれの歯の様々な状況における適切な対処法や歯の知識にも長けている訳ですから、ホワイトニングを実施するに当たって想定されるリスク管理の持ち駒も豊富なのです。クリニックでのホワイトニングは何の不安もなく、安心・確実性・満足感が違うということです。
歯のホワイトニングにおいては、専門家である歯科医師による診査・診断が不可欠であり、歯(生体の一部)に薬剤を作用させるのですから、適正なホワイトニング剤を使い、安全に行われるべきでしょう。
クリニックで提供されるホームホワイトングでは、ジェルやマウストレーが初めからセット(スターターキット一式)になっています。ただし、マウストレーは歯型を採ってから製作し、お渡しすることになりますので、1度歯型を採りに来院していただき(初診カウンセリングも含む)、2度目の来院時にキット一式をお渡しする(やり方の説明やデモ等を含む)という流れになりますから、都合2回来院は必要ということになります。その後はそのクリニックによってチェックの体制が異なるので、各クリニックでお尋ねください。
再三お伝えしている通り、ホワイトニングは人それぞれ進行具合(効果の差)が違います。スターターキットの梱包内容(ジェル)を使い切った時点で、ほとんどの人は十分その効果が認められるのですが、例えば、もっと白くしたいなどという場合には、担当歯科医師に一旦チェックしていただくのがいいでしょう。その時点での仕上がりの状態に応じて、追加ジェルの適量をアドバイスしてもらえますから、自己判断でジェルだけを窓口で追加購入するよりも無駄がありません。また白さの限界点の見極めも自分では判らないと思いますので、その辺に関ても歯科医に相談し見立てていただくのがベターでしょう。
クリニックでジェルやマウストレーを単品購入される場合、注意していただきたいのが、購入は行きつけの(ホームホワイトニングキットを最初に購入し指導も受けた)クリニックでというのが基本です。
堅苦しいことを言うようですが、なぜかと言うと、クリニック(医療機関)では、あくまで医療行為の一部としてホームホワイトニング関連品を提供および指導しておりますので、美容・エステ・サロンなどで提供されているケースとクリニックとでは認識が異なり、扱いも違います。
何を言いたいのかというと、例えば当医院の場合などは、フリーで見ず知らず(ホワイトニングで来院履歴の無い人)にホワイトニングジェルのみの販売やマウストレーのみ製作の依頼には一切対応しておりません。仮に過去に他のクリニックでホームホワイトニングの経験があるからという人の場合でも同様です。
おそらく当医院以外のホワイトニングを取り扱っている多くのクリニックにおいても、この部分に関しては同じ対応の所がほとんどではないでしょうか。マウストレーだけの販売についても同様です。
そのいちばんの理由は、例えばジェルを自己判断で多量に購入し、その後、何らかの不具合(症状・事故)があっても責任を持てないからです。診察無しで窓口でジェルだけ購入しても、果たしてその効果が出るのかどうかも分かりませんし、効果が出なかったからと言っても当然その責任も負えません。
マウストレーに関しても、それを用いて、どこからか手に入れた市販のジェルの使用してとなると、やはり事故の危険性が懸念されますから、マウストレーのみというのも、見識のある多くのクリニックでは安易に販売していないでしょう。
クリニックは根本的に医療機関ですので、過去にそのクリニックに来院履歴が無い人で、自分の名字だけ告げた電話(ジェルのみ購入希望の人)にハイハイと言って、窓口でお気軽にホワイトニングジェルのみの販売というのは、やっていない所がほとんどでしょう。通販ショップではなく、医療機関なのですから。
ちなみに当医院の場合、ホームホワイトニング希望者(未経験者・初回)は手順として電話予約後、来院、身分証明書(保険証)提示、カルテ作成、診察、カウンセリングが必須であり、これらの行程無しでのホワイトニングサービスの提供はいたしません。
ネット通販でも様々なホームホワイトニングキットが販売されていますが、ホワイトニング効果を左右する要である「マウストレー」は、通販モノとクリニックで製作の物とでは、決定的な違いがあります。それはトレーの形状(および作り方)と装着時のフィットの精度です。
通販モノの大半は軟化した材料を自分で歯列に押し込んで歯の圧痕を付けて仕上げるという簡易的なやり方のものが多いようです。トレーの強度を保つために厚みもけっこうあり、ゴワつき感・不快感があり、装着時のフィット感は決していいとは言えません。スポーツ選手が使うマウスピース(通販品)よりは厚みはないものの、作り方のイメージで言えば、ややそちらに近いと思います。
装着時のフィット性の良し悪しは、ホワイトニングの仕上がりにかなり影響してきます。ネット通販品のキットに同梱された適合の悪いトレーを使用し、自己流のやり方(使用時間・日数)でホームホワイトニング実施し、さほど効果が出なかった場合、「なーんだ、ホワイトニングってこの程度のモノなんだ・・・」と言ってあきらめてしまうのは、とても残念なことです。
クリニックで製作される物は通常の治療の時と同様に歯型を採って、トレーの材料であるトレーシートを専用プレス機を使って歯型の上から強圧プレスして製作します。このように精密・精巧に作られますから適合・密着度が違います。通販モノのそれとは、およそ比較の対象にすらなりません。
トレーの厚みも通常は0.5mm前後で、装着時の違和感・不快感も最小限に抑えられます。先にも述べましたが、トレーをお口の中に入れたままにすることの装着感(違和感・不快感)がイヤという理由でホワイトニングを中断した人は、当院では過去に1人もおりません。クリニックで製作された物は、トレーの厚み以外に装着時の違和感・不快感の原因となる余剰な部分がきれいにトリミングされた、かなりスマートな形状になっています。
クリニックでマウストレー製作(単品購入)の場合は、歯型を採って再製作(製作期間を経て後日お渡し)という形になるのがふつうですから、2度の来院が必要ということになります。
マウストレーの出来不出来(形状・適合度)は、ホームホワイトニングを実施する上で、その仕上がり効果(満足感)を左右する最重要ポイントであると私は思います。クリニックでのホームホワイトニングを推奨する最も大きな理由(メリット)は、この精密・精巧なマウストレーを手に入れることが出来るということにつきるでしょう。
クリニック(およびクリニック提携技工所)以外ではこのマウストレーは手に入りませんし、例えばネットでトレー製作(自作)に関して情報収集し、製作材料・機材をかき集めて自作するなどは途方に暮れる作業となってしますし、費用もかなり(純粋にホワイトニングのみにかかる費用以上に)かかります。
まとめになりますが、ホームホワイトニングをお勧めする理由、ホームホワイトニングを実施するならクリニックでキットを購入し歯科医の指導の下にの方がいいという理由、ご理解・ご納得いただけたでしょうか?
クリニックでシステマティックな流れで実施するホワイトニングと、ネット通販品使用によるお気軽なホワイトニング、、、「安物買いの何とやら・・・」にならないよう、今回紹介させていただいた内容を参考に、ご自身の事情・状況にあったホワイトニングを選択されてください。